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疲労感と血糖スパイク

BY: 池田 由依

2024/07/31

疲労の原因には、ホルモン・ミネラル・自律神経・睡眠・ストレスなどさまざまな要因が考えられますが、一般的に漢方において疲労は「気虚」と表現し治療の対象とします。今日は「気虚」と血糖スパイクの関係と、「気虚」を改善することを通して血糖スパイクを改善する方法について説明します。

「気虚」の原因

気の不足

「気虚」の人は文字通り「気」が不足しています。漢方でいう「気」とは私たちの心と体の元気の源であり、食べ物を消化吸収することで作り出している目に見えないエネルギーのようなものです。体の全ての臓器は「気」の力で活動し、全身は「気」により免疫防御されているため、「気」が不足することで全身的なエネルギー・免疫力の低下に陥る可能性があります。

「気虚」チェック

気が不足しやすい人のチェック項目を挙げるので確認してみてください。

▢疲れやすい・朝から疲れている 

▢胃腸が弱い

▢食べ過ぎると胃がムカムカしやすい

▢声が小さい

▢階段を登るのがつらい

▢甘い物が欲しくなる 

▢少し動くだけでだるくなる

▢風邪をひきやすい

▢冷えやすい

▢朝が弱い

▢昼食後に眠くなる

▢寝汗をかく

▢胃下垂と言われたことがある(内臓下垂ぎみ)

「気虚」になりやすい人

気が不足しやすい人が体質的には、胃下垂であったり、胃腸が弱っていたりすることが多いです。胃腸が弱っているとは、食べ過ぎると胃がもたれたり、下痢をしやすかったり、食欲がなかったり、食べているのに太れなかったりする不調をかかえているということです。私達は食べたものを胃で消化し、小腸で吸収しているため、胃腸が弱ると食べたものからエネルギーをつくり体の血となり肉とならせることができないため疲れやすくなります。

全身の各細胞の中にある「ミトコンドリア」という器官は、小腸で吸収され、血管や肝臓を通過して全身の約37兆個の細胞に運ばれた栄養を元にして身体のエネルギーを作っています。

基本的には、ミトコンドリアの機能を活性化することが、疲れにくい体をつくるために重要となります。

したがって、「気虚」を改善するためには、ミトコンドリアの機能を活性化させることと、そもそも胃腸機能が低下している場合には胃腸機能改善も行なうことが必要となってきます。

「気虚」と血糖スパイクの関係

では、気虚と血糖スパイクがどのように関わっているのでしょうか?

気が不足している場合、ミトコンドリアの機能が低下していることが多いとお伝えしました。

「ミトコンドリア」では食事由来の糖質・脂質・タンパク質からエネルギー(ATP)を合成している細胞内小器官です。糖質の最小単位であるブドウ糖(グルコース)をもとにして、様々なミネラルを使用しながらエネルギー(ATP)をつくっています。

糖質というとお菓子に含まれているイメージがありますが、主食としているような食品に多く含まれています。

・スパゲッティ(一皿71.2g)・うどん(一玉52g)・ベーグル(1個49.5g)・そば(一玉38.4g)・ごはん(茶碗一杯36.8g)・かき(1個33.8g)・バナナ(1本28.2g)・食パン(1枚26.6g)

 

ここで問題になるのが、「糖質だけを摂る」という行動です。

ミトコンドリアでは糖質からエネルギーを生み出す過程の中で以下のような様々なミネラルを使用しています。

解糖系:ビタミンB群

クエン酸回路:ビタミンB群、鉄、マグネシウム

電子伝達系:ビタミンB群、鉄、コエンザイムQ10

過剰な活性酸素の除去:ビタミンC、ポリフェノール

これらのミネラルが補充されないまま糖質を摂り続けた場合、糖質の代謝をうまく進めることができず体はエネルギー不足となるので、結局続けて「糖質」つまり甘いものを欲しがります。これがミトコンドリアの機能が低下している状態です。

そうして糖質を過剰に摂取する生活をつづけた場合、膵臓が過敏になることで血糖値の乱高下が発生します。さらに血糖値の乱高下が慢性化すると、慢性的な低血糖状態に陥り、漢方的には「気虚」の状態へと陥ります。

「気虚」体質を改善するための食事法

タンパク質を吸収しやすい形で摂る

動物性のタンパク質は肉・魚・卵・乳製品などに含まれ、植物性のタンパク質は穀類・野菜・きのこなどに多く含まれます。タンパク質は食べたそのままの形では吸収できないので、胃や腸の消化酵素によって消化され細かくされてから小腸で吸収されます。

特に「気虚」の人にとっては、いかに「吸収しやすく」するかが重要です。

・良く噛むこと(一口30回以上目安)

・早食いをしないこと

・ボーンブロスで摂ること

 

以上のような工夫でタンパク質の消化への負担が減り吸収されやすくなります。

鉄・マグネシウムが不足しないようにする

以下のミネラルはミトコンドリアでエネルギーをつくるために重要です。

・鉄

アサリの水煮(1/2缶19.3㎎)、豚レバー(80g10.4㎎)、レンズ豆(30g2.7㎎)、マイワシ(2尾2.2㎎)、こまつな(2株2.2㎎)など

鉄の吸収がしっかりと行なわれるためには適正な胃酸分泌が必要です。制酸剤を定期服用している人は注意しましょう。

・マグネシウム

木綿豆腐(1/3丁130㎎)、キンメダイ(一切れ73㎎)、ひじき(10g64㎎)、ほうれんそう(1/4束62㎎)、とうもろこし(1本56㎎)、かぼちゃ(1/8個38㎎)、わかめ(味噌汁1杯12㎎)、クルミ(3個18㎎)など

マグネシウムはこれらの食品に多く含まれますが、経皮吸収もされるのでエプソムソルト(入浴剤)を使用するのも良いでしょう。

また、カルシウムのサプリメントを摂取している場合ですが、血中のカルシウム濃度が高まると鉄、亜鉛、マグネシウムなど他のミネラルの吸収を阻害するため、カルシウム:マグネシウムが1:1で含有されている製品が好ましいです。

・コエンザイムQ10

大豆、くるみ、アーモンド、ホウレンソウ、イワシ、牛肉、鶏肉など

ミトコンドリアに必要なビタミンB類を充足させる

以下のビタミンはミトコンドリアでエネルギーをつくるために重要です。

・ビタミンB1

豚肉(ひれ)(一切れ1.06㎎)、うなぎのかば焼き(一串0.75㎎)、絹ごし豆腐(一丁0.3㎎)、玄米(茶碗1杯0.24㎎)

・ビタミンB2

豚レバー(80gあたり2.88g)、うなぎのかば焼き(一串0.74㎎)、納豆(1パック0.28㎎)、鶏卵(1個0.22㎎)、マガレイ(一切れ0.35㎎)、まいたけ(1パック0.19㎎)、干し海苔(1枚0.07㎎)、わかめ(味噌汁1杯0.03㎎)

・ナイアシン

カツオ(刺身5切19㎎)、たらこ(1/2個14.9㎎)鶏むね肉(1/2枚12.1㎎)、豚レバー(80g11.2㎎)クロマグロ(刺身5切9.9㎎)、まいたけ(1パック8.19㎎)、マサバ(一切7.3㎎)

糖質の過剰摂取や飲酒でビタミンBが消費されるので注意しましょう。

油をココナッツオイルにする

ココナッツオイルは他の油よりミトコンドリアの原料になりやすいため、炒め物など加熱調理をするときはココナッツオイルがお勧めです。

また、非加熱調理ならMCTオイルも使用できます。MCTオイルはサラダやスープなど料理に垂らして使用しましょう。

漢方薬の利用

漢方における気虚の治療では人参・黄耆など補気(ほき)作用のある生薬や柴胡・升麻など昇提(しょうてい)作用のある生薬を用いる場合が多いです。

気虚が進んだ場合は食品だけではなく、漢方薬に頼るのも良いでしょう。漢方薬で治療する場合でも、食事内容を改善することは必須となります。

まとめ

血糖スパイクの原因として「気虚」があり、気虚を改善するためには「ミトコンドリア機能を活性化」することが重要であることをお伝えしました。

必要なビタミン・ミネラルを摂ることは重要ではありますが、何か一つの食品だけを摂るというよりは、「糖質のみ」しか含まれていない精製された食品ではなく、食べ物本来の形で食すということを意識(白米より玄米、小麦より全粒粉など)したり、緑黄色野菜や海藻類やきのこ類を普段の食生活に取り入れること、早食いしないことなどビタミン・ミネラル不足の原因を是正し、体質を少しづつ変えていくことで血糖スパイクの起こりにくい体を取り戻していきましょう。

 

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