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胃腸が弱い人の血糖スパイク:血糖スパイクの見つけ方

BY: 池田 由依

2024/10/02

日本人の中には「胃腸が弱い」と感じる人が少なくありません。胃や腸の機能低下により、胃もたれや膨満感などを感じたり、食が細くなる、など食事によるからだの不調を感じやすい状態を漢方では「脾」が失調している「脾虚」の状態と考えます。この状態が続くと、体全体に悪影響を及ぼすことがありますが、その一つが「血糖スパイク」です。脾の状態を確認するとともに、血糖スパイクが出ていないか確認してみてください。

血糖スパイクとは?

血糖スパイクとは、食事後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に低下する現象です。この急激な血糖値の変動は、糖尿病のリスクを高めるだけでなく、疲労感や眠気、イライラを引き起こす原因にもなります。

「脾」の状態は大丈夫?

食薬の基本は「脾」つまり食べ物の消化吸収を司る胃腸の機能を整えることです。脾の機能が低下すると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 食欲がない
  • 油物でもたれる
  • 胃痛がある
  • 胃下垂だと言われたことがある
  • 食後に強烈に眠くなる
  • 食後に下腹部が膨れる
  • 気が付かないうちにアザができていることがある
  • 食べ過ぎてしまう
  • お腹の中で水がぽちゃぽちゃする
  • ゲップがよく出る
  • 口臭が強い
  • 口内炎ができやすい
  • うすい唾やよだれが出る
  • お腹にガスがたまりやすい
  • 気分の浮き沈みがある
  • 頭痛や動悸が出る
  • 食事の間隔があくと頭痛や寒気がしてくる
  • 甘いものが無性に欲しくなる
  • 食べても太れない
  • 疲れやすい
  • 体に良いと言われているものを食べると下痢や便秘になる

このうち5つ当てはまると「脾」の機能が低下している可能性が高いです。

「脾」の機能低下が血糖スパイクを引き起こしやすい理由

血糖スパイクの発生機序には、食事の消化・吸収スピード、腸内細菌、腸の動き、インスリン分泌の量とタイミング、副腎の働き、食事のGI値などさまざまに関わっていると考えられています。個人差が出る内容ではありますが、以下に脾の機能低下がある場合にみられる、血糖スパイクを引き起こしやすい状況を挙げます。

栄養素が偏った食事

消化や吸収の力が弱いことにより、体のエネルギー不足が発生しやすいため、甘いものを欲する傾向があります。それに伴い、高糖質かつ食物繊維が不足している食事に偏ると、腸内細菌のバランスが悪化したり、インスリンの分泌に負担がかかり、血糖値のコントロールが難しくなることがあります。

早食いしたとき

忙しさやながら食べなどが原因となり、しっかり噛まずに早食いしている場合、過食となり胃や腸に負担をかけてしまい、胃腸の調子を悪化させてしまうことがあります。

食事の間隔が空いたとき

長時間食事を取らないと、次に食事をした際に急激に血糖値が上昇しやすくなります。これは、空腹の後に一気に多くの糖質が吸収されるためです。

ストレスがあるとき

 腸はセロトニンというホルモンの大部分が貯蔵されている場所であり、セロトニンは腸の動きに関わっているだけでなく、精神を安定させる働きがあります。そのため、腸内環境の状態が悪いと、心が不安定になりやすいと言われています。慢性的に強いストレスがかかっている状態が続くと、脾の働きが低下し、血糖値を安定的に調整することが難しくなることがあります。

血糖スパイクの見つけ方

血糖スパイクが発生しているかどうか、次の症状に注目してみましょう。

食後の強い疲労感やだるさ

胃腸が弱いと、食後に消化に血流やエネルギーが取られて強い疲労感を感じることがあります。また、脂っこいものやタンパク質など特定のものを食べた後に胃が重く感じる、あるいは吐き気がする、下痢をすることがあります。これに加えて、血糖スパイクが重なると、さらに体がだるく感じられることがあります。

食後2~3時間の強い空腹感

 食事の内容が糖質に偏っていたり、体内に吸収される速度が早すぎる場合、食後あまり時間が経っていないのにすぐに血糖値が下がってくることがあります。そのため、食後2~3時間後に急に空腹感を感じることがあります。空腹感だけでなく、頭痛や動悸や寒気が出ることがありますが、これは食事からの血糖値が下がり、体が血糖値を上げようとしているサインです。

自分の血糖値を定期的にチェックする

血糖スパイクを正確に把握するためには、血糖値のモニタリングが有効です。連続血糖測定器(CGM)であるFreeStyleリブレ2を用いることで食後血糖や夜間低血糖の有無を知ることができます。上腕の後ろ側にセンサーを取り付けることで皮下の間質液中(細胞と細胞の間にある液体)の中のグルコース濃度を測定しスマホのアプリと連動することで経時的に記録でき、1回の装着で2週間分の記録をつけることができます。

血糖スパイクを防ぐための対策

胃腸虚弱の人が血糖スパイクを防ぐためには、消化に負担をかけず、血糖値を安定させる食事と生活習慣が重要です。

消化によい食事を摂る

  胃腸に負担をかけない食事を心がけましょう。例えば、タンパク質を摂る場合には、肉より魚を選び、肉で摂る場合にはミンチやハンバーグなど消化しやすい状態に調理されたものがよいでしょう。また、ボーンブロスの出汁を使うこともおすすめです。

一口30回噛んで食べる

食べ物をよく噛んで食べることは、胃腸に負担をかけず、消化を助ける重要なポイントです。一口30回噛み、ゆっくり食べることで、血糖値の急上昇も防ぐことができます。

補食を摂る

食事間隔が空きすぎると、次に食べたときに血糖値が急上昇しやすくなるため、3食きちんと摂り、空腹時間をできるだけ短く保ちましょう。食後2〜3時間で空腹感が出た時に、軽く食べられる補食を持ち歩くことも対策の一つです。例えば、栗、葛湯、一口サイズのおにぎり、ナッツなど砂糖や人工甘味料の含まれていない食品がおすすめです。

ストレス管理を行う

 胃腸の働きを改善するためには、ストレス管理も重要です。ストレスが胃腸に与える影響は大きく、リラクゼーションや適度な運動、趣味を楽しむことで、ストレスを軽減し、胃腸の調子を整えましょう。

インナーマッスルを鍛える

胃下垂の人は下腹部の筋力が低下していることが多いです。下半身の筋力が低下すると、さらに胃が下垂することで不快な消化器症状が出やすくなってしまうとともに、年齢とともに骨盤底筋が弱ると子宮や直腸が肛門から出てしまう脱肛という症状がでてしまうこともあります。下腹部のインナーマッスルを鍛えられるトレーニング(自重トレーニングやヨガなど)を行うことで消化器症状の悪化を抑え、血糖値の安定化にもつなげていきたいところです。

注意!肉や油物で胃がもたれたりお腹の調子を崩しやすい人

タンパク質をたくさん摂りたいけど、お肉や脂っこいものを食べると調子が悪くなるという人も、脾の機能が弱っている人の中にみられるので、そのような人は以下の点に注意しましょう。

梅干しや酢の物を摂る

肉や魚などのタンパク質は胃酸で分解してこそ吸収できるため、胃酸の正常な分泌が必須となります。なので、胃がもたれるからという理由で制酸剤を服用している場合はタンパク質の消化力が低下している可能性があります。胃酸の力が低下しているかもしれないと思うときは、食事のときに、梅干しや酢の物など酸味のある食品を取り入れ胃酸の分泌を促しましょう。

胆汁の分泌を正常化する

 肉や油などの脂質は胆のうから分泌される胆汁酸と膵臓から出る膵液により、小腸で吸収されやすいかたちになります。さらに胆汁酸はからだの老廃物を少しずつ体外に排泄する役割も持っています。苦味のある野菜(ルッコラ、ゴーヤ、クレソン、アーティチョークなど)や香り高いハーブ(クミン、コリアンダー、ミントなど)や杜仲茶やたんぽぽ茶などを取り入れ、胆汁酸の分泌を促しましょう。

まとめ

胃腸虚弱は血糖スパイクを引き起こすリスク要因となり、体全体の健康に影響を及ぼします。胃腸が弱いと感じる方は、食事内容や食事のタイミングを意識し、消化に負担をかけない生活を心がけることで、血糖スパイクのリスクを減らすことができます。自分の体の変化に注意を払い、適切な対策を取り入れることで、より健康的な生活を送ることができるでしょう。

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