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血糖スパイクの基本

BY: 池田 由依

2024/07/11

病院では見つけにくい体調不良の原因がありますが、その1つが血糖値の乱れです。私たちの体の一番重要なエネルギーであり、現代人を悩ます生活習慣病の原因ともなり得る「糖質」との付き合い方を間違えないことは、私たちの食生活の根幹であると言っても過言ではありません。

血糖スパイクについて

血糖とはなにか?

「血糖」とは血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)のことです。ブドウ糖は私達の体のエネルギー源として最も重要なものです。車にガソリンが必要なように、人間にブドウ糖がなければ脳・全身の筋肉・内臓・細胞・血球などを動かすことができず全身に異常をきたします。

体内に十分にブドウ糖が供給されていなければ、筋肉や肝臓に貯蔵されたグリコーゲンや脂肪を分解してエネルギー源として利用します。逆に、ブドウ糖が過剰になれば、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして、また脂肪細胞に脂肪として貯蔵します。

糖尿病とは?

ブドウ糖を体のエネルギーとして使用するために、血中から体の各細胞に運ぶ唯一のホルモンを「インスリン」といいます。インスリンの作用不足は私たちの体に重大な影響を及ぼします。インスリンの作用不足により血液中に持続的に高い血糖値が続く状態が「糖尿病」と呼ばれる状態です。日本では糖尿病患者と糖尿病予備群は合わせて約2,000万人いるといわれています。

尿病で何より恐ろしいことは、高すぎる血糖を放置することで血管が障害を受け末梢神経や網膜、腎臓などの機能を破壊してしまうことです。

漢方でも糖尿病のことを「消渇」と言い水分を飲んでも飲んでも口の渇きが消えない特徴をもって表現されています。

その体調不良は血糖値の乱れが原因かもしれない?

健康な人では一晩絶食をしても血糖値は70~100㎎/dlの範囲にあり、糖質を主体とした食事を摂取した後でも140㎎/dlを越えない範囲に調節されています。

このような精密な血糖値のコントロールは、血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」とインスリンの作用に拮抗して血糖を上昇させるいくつかのホルモンのバランスのとられた調節によって成り立っています。

糖尿病の場合は持続的に高血糖状態が続いています。しかし、糖尿病ではないのに血糖値が急激に高くなったり低くなったり、低くなりすぎたりする場合があります。その血糖値の異常は健康診断の血液検査では見つけにくく、もし体調の不調を訴えたとしても大した問題として扱われなかったり、心の病として判断されてしまうこともあるかもしれません。

・食後1~2時間後に以下のような症状はないですか?

□眠くなる

□倦怠感が出る

□強い空腹感を感じる

□生あくびが出る

□動悸や震えが出る

・睡眠中~朝にかけて以下の症状はないですか?

□眠りが浅い

□悪夢を見る

□寝汗をかく

□朝起きると口がカラカラになる

□朝起きた時に肩が凝っている

□朝の食欲がない

上記のような症状がある場合は、血糖値の乱れが起きている可能性があります。

食後の血糖値の重要性

食後の血糖値の血糖値が高いことは独立して大血管疾患(狭心症・心筋梗塞・脳卒中・末梢動脈疾患)や酸化ストレスの原因あることが分かっています。

食後の血糖値が急激に上昇することを「血糖値スパイク」と呼んでいます。

血糖値スパイクは、食後1~2時間後に血糖値が急激に上昇する現象を指します。健康な方でも、食事内容や食べ方によっては血糖値スパイクが起こることがあります。

正常な血糖値はいかなる食材でも血糖値の上昇は50~60㎎/dl以下であり、食後2~3時間には空腹時血糖へ緩やかに戻っていきます。しかし、血糖値の乱高下が起こりやすい食生活をしている場合、食後の血糖値が大きく鋭く上昇し、その後に急激に血糖値が低下してしまうことになります。これは空腹時血糖は正常なため病院で血液検査をしても見つからないことが多く、血糖値が高いとも糖尿病とも経過観察とも言われることはありません。

血糖値の乱れ

以下に、24時間血糖測定器FreeStyleリブレを用いて測定した実際の血糖値の変動のグラフを載せます。同じ人で測定しても、食事の種類、材料、時間、睡眠時間、ストレスの有無などによって、血糖値の変動の仕方は異なってきます。

①食べた内容により血糖値の急上昇が発生した例

・食べたもの

朝:コンビニパン  昼食:トマトラーメン(外食中華) おやつ:大豆  夕食:なし

・血糖値の乱高下による影響

昼食後の血糖値が急上昇しています。

外食の中華料理が血糖値を上げ過ぎてしまっています。朝食で血糖値をゆるやかに上昇させる食品をしっかり摂取するか、空腹になる前に補食で糖分を補っていれば、昼食後の過度な血糖上昇は防げたかもしれません。

②食事時間の間隔が空いたことで低血糖症状が出現した例

・食べたもの

朝食:焼きそば、中華スープ  昼食:焼きそば、中華スープ 夕食:タンメン(外食中華)

・血糖値の乱高下による影響

昼食前に低血糖症状(寒気、動悸、ほてり)、昼食後に低血糖症状(眠気、頭痛)が出現しています。

朝食と昼食の時間が空いてしまい、昼食時間の前に血糖値が下がりすぎて低血糖症状が出現してしまいました。朝食で血糖値をゆるやかに上昇させる食品を摂り、空腹感が出る前に補食で糖質を補うことが出来れば、昼食でも血糖値の過度が上昇は防げたかもしれません。

③食事間隔が長いことで血糖値が急上昇した例

・たべたもの

朝食:湯豆腐、玄米、さば  昼食:鮭チャーハン、中華スープ 夕食:玄米、サバ味噌、ゆでたまご

・血糖値の乱高下による影響

全体的に低血糖にも急激な血糖値の上昇に伴う低血糖にも陥らずに不調を感じずに過ごすことができています。朝食と昼食の時間が空いていることで、小麦ではなく米を摂取したにもかかわらずやや血糖値が急上昇してしまった可能性もあるので、空腹になる前に補食を摂取するとよりよかったかもしれません。

糖質過多のリスク

血糖値が乱れると低血糖状態を生じやすくなり、寝つきが悪くなったりする体調不良が生じるだけではありません。低血糖状態の時には甘いものを欲するようになりますが、その時に血糖値を急上昇させやすい食べ物を摂取することで、さらなる血糖スパイクを生んでしまったり、糖質の摂取量が増えてしまうことで肥満につながったりという悪循環に陥ります。

食後の血糖値を安定化させることは美容と健康の基本になってくると言えるでしょう。

血糖コントロールを改善するためのポイント

  1. 早食いを避けること

一口30回以上噛んで食べましょう。

  1. 血糖値が急激に上がりやすい食べ物を避けること

血糖値を急激に上げてしまう食品のことを「高GI」食品と呼び区分しています。例えば、パンよりご飯、パンなら精製パンより全粒粉パンの方が急激に血糖値を上げにくいです。

  1. 食後に軽い運動をすること

「ごちそうさま」をしたらすぐに15分程度の散歩などあくまでも軽い運動をします。激しい運動は消化不良の原因になるため避けましょう。

  1. 肥満の改善

肥満はインスリンの効きを悪くするため血糖値が下がりにくくなります。

まとめ

生活習慣病の予防において重要である血糖値のコントロールですが、糖尿病にならないことを目的にするだけではなく、食後の血糖値の急激が上昇すなわち「血糖スパイク」を抑えることも重要です。食後の血糖値の上がりにくい生活を心がけましょう。

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